「人手不足で大変です」
そう話す店長は多いけれど、私自身が店長だった頃、実は本当につらかったのは
「人がいないこと」そのものよりも、「人がいてもうまくいかないこと」でした。
職場の空気、人との信頼関係、誰にも言えない責任の重み──
今思えば、人手不足は表面的な問題でしかなかったのです。
もくじ
キッチン専門店の店長時代。表には出せなかった悩み
私はかつて、キッチン用品を扱う店舗で店長をしていました。
接客が好きで、商品知識を伝えるのも楽しい。
売上を追うのもやりがいがありました。
でも、スタッフが入れ替わるたびに教育し、
シフトを組み、急な欠勤に対応し、時には自分がレジや品出しに飛び込む。
それが毎日のように続くと、次第に体力よりも「心」が疲れていきました。
特にしんどかったのは、「自分の気持ちを押し殺して職務を全うしなければならない場面」です。
- 上からの指示に納得できなくても、スタッフに落とし込まなければいけない
- 利益率の良い商品をスタッフに勧めてもらう必要があるが、プレッシャーをかけたくない
- ディスプレイやPOPの装飾が苦手で、自信を持てない
- 自分の前では良い顔をして、サブの前では態度が変わるスタッフがいる
こうした“小さなモヤモヤ”が積み重なり、誰にも相談できずに自分を責めてしまうことが何度もありました。
本当につらかったのは「チームを保つこと」だった
確かに人手も足りない。でも、
・協力し合えない
・愚痴ばかりになる
・仕事を覚えてもらえない
そんな状況が続くと、どんなに人数がそろっていても「安心感」は生まれませんし、定着にも繋がりにくいです。
私は、「どうしたらこの人たちに辞めずに続けてもらえるか」をずっと考えていました。
でも、それを誰かに相談することもできず、「やっぱり自分の力不足なんだ」と思い込んでいたのです。
そこから気づいた、職場づくりのヒント3つ
1. 人間関係は“最初”がすべて
採用・初日の声かけ・最初の3日間。この短い期間で関係性は9割決まると痛感しました。特に初日は、一緒にお昼を取り、話しやすい雰囲気つくりをします。
仕事のことじゃなく、普段の何気ない会話を通して、スタッフの人間性を知る上でも重要だと感じます。
2. スキルと同じくらい「雰囲気をつくる人」を大切にする
ひとりでも「空気をほぐしてくれる人」がいるだけで、職場はガラッと変わります。
上司に直接相談ににくいことでも、ワンクッションあるだけで違いますよね。
人手が足りないとどうしても「スキル」ばかりに目が行きがちですが、ここに頼りすぎるのも諸刃の剣。売上が悪い時や、変なお客さんに当たってしまった時など、こんなスタッフの存在がありがたいのです。
3. 自分だけで背負わない仕組みをつくる
「全部自分がやらなきゃ」は崩壊のサイン。報連相を回しやすい仕組みと、頼れる人づくりが必要でした。
指示したことの100%ができていなくても、相手を責める前に「指示の仕方がわかりにくくなかったか?」を振り返るようにすれば、確かに骨は折れますが、それを見ているスタッフがちゃんといます。
さいごに:店長も一人の人間だからこそ
店長は「できて当たり前」「支えて当たり前」になりがちです。
でも、誰よりも現場の空気を感じ、誰よりも悩み、孤独になりやすいのも店長。
人手不足という言葉では語りきれない葛藤が、そこにはあります。
だからこそ、今現場で悩んでいる方に伝えたい。
あなたの悩みは「弱さ」ではなく、「責任感の裏返し」です。
一人で抱え込まず、まずは「自分自身の働きやすさ」から見直していいんだと、あの頃の自分にも伝えたいです。